生と死 meaning of life and death 2005 2 22
多くの人は、いつの間にか、
「生と死」というものが、わからなくなってしまったのです。
以前、老犬の話を書きましたが、
これは、「子犬と老犬」の物語ではなく、
人間のことを言っているのです。
「生まれてくる者と老いていく者」のことを言っているのです。
どんなに科学技術が発達しても、
不老不死は、絶対に、あり得ません。
どんな人にも、「老い」と「死」が、いつの間にか迫ってきているのです。
死に際して、人間は、どう思うのか。
「私の夢は、かなえられなかった」と言うのでしょうか。
しかし、夢というものは、いつも、そういうもので、
かなわぬ夢が、普通なのです。
夢というものは、子孫に託すものです。
老犬 an old dog 2004 7 2
ある方から、このような話を聞きました。
ある家に、年老いた犬がいました。
冬の寒い日、
老犬をいたわる飼い主を見て、ある方は、飼い主に子犬を与えた。
飼い主は、老犬の家の隣に、子犬用の家を建てた。
老犬は、飼い主の愛情が、子犬に移ることに不安と悲しみを感じた。
老犬は、元気に動き回る子犬を見て、自らの衰えと、
自らの死が近いことを悟ることになった。
しかし、子犬は、決して、自分の家に入ることなく、
老犬と一緒に寝た。
老犬は、子犬から伝わってくる暖かさで、生命の暖かさを知り、
同時に、きびしい冬の寒さをしのげると知って、
なぜ子犬が来たのかを知ることになった。
老犬は、子犬に対して持った嫉妬とも思える感情が、
いかに愚かなことかを知ることになった。
春うららかな日、元気に、はしゃぐ子犬。
死んだかのように見えた木々が、次々と花を咲かせる。
力強い生命の躍動が、春を知らせるが、
老犬には、それが、死を知らせることになった。
だんだんと気持ちが消えていく。
だんだんと見えなくなっていく。
春の日差しを受けて、暖かくなっていく大地。
しかし、老犬の体は、ゆっくりと、しかし、確実に冷たくなっていく。
暖かい大地が、老犬の体を温めても、それは、むなしさへと変わる。
子犬は、老犬の最後を見て、やっと自分の家に住む時が来たことを知る。
犬は、あれほど元気だったのに、あなたより早く、確実に衰えていく。
犬は、あなたより後から来て、先に行く。
なぜと問う前に、そこに意志が働いていることに気づくべきなのです。
人間に、最も身近な動物。
その犬の役割に気づかなくてはならない。
犬を通して、何を知らせているかを知るべきなのです。